重ね葺き工事(カバー工法)が勧められる理由
アスベストが含まれないスレート系屋根材(カラーベスト・コロニアルやニチハ・パミールなど)において不具合(割れや表面の剥離など)が発生している屋根の改修工事は、主に「葺き替え」「重ね葺き(カバー工法)」のどちらかとなります。
この2つの工事において、大きな違いとなるのは「撤去費用と廃材処理費が発生するかどうか」という点です。
重ね葺き工事は棟板金や雪止め金具など屋根上の突起物を撤去さえすれば、あとの廃材は新規屋根施工で発生する廃材のみ。当然廃材処理費は葺き替え工事と比較すると安く抑えることが出来ます。
(既存棟板金 撤去イメージ)
(既存雪止め金具 撤去イメージ)
一方の葺き替え工事では「既存屋根材を撤去する」という大きな作業と「廃材の処理・運搬」があることから、当然その費用が重くお施主様にかかってくるのです。
(既存屋根材撤去中)
(撤去した屋根材)
では撤去費用と廃材処理費用が抑えられたその恩恵は誰が受けるのでしょうか?
当然費用を安く抑えることができたことで、その恩恵はお施主様が受けられて当然なのですが...
意外と高い重ね葺き工事(カバー工法)の工事費用
実は重ね葺き工事によって恩恵を受けられるのは、お施主様ではなく施工業者なのです。
既存屋根材の撤去費も廃材の処理費も安く抑えられたのに何故?
葺き替え工事よりも安く工事が出来るからと勧められたのに何故?
と思われるかもしれませんが、実は重ね葺き工事(カバー工法)によく用いられるガルバリウム鋼板、これが非常に高いのです。
(塗装業者が作成した重ね葺き工事の見積書)
(リフォーム会社が作成したカバー工法の見積書)
それなのに「撤去費がかかる」「廃材処理費がかかる」という理由で、リフォーム業者さんは割高な重ね葺き工事(カバー工法)を勧められる傾向にあります。
ガルバリウム鋼板の屋根材には「定価」となるものが設定されていない屋根材もあり、価格は各業者によって自由に決められています。
中には通常価格を偽って表示し「安い」というイメージを与える悪質なリフォーム業者さんもいらっしゃいます。
また製造メーカーや生産国が全く不明な屋根材まで存在しています。
この先何年もその家に住まわれるのに、そんな屋根材を使って安心して暮らすことができますか?
お客様のことを考えてカバー工法を提案しているのではありません。
施工業者自らの利益を考えた結果が重ね葺き工事なのです。
「重ね葺き工事」は既存の屋根材の上から新しい屋根材を施工する画期的な工法でした。
しかしいずれ上から被せた屋根材も剥がす時期がやってきます。
その時の費用は?撤去費や廃材処理費は誰が負担するのでしょう?
それはそこに住まわれているお施主様なのです。
重ね葺き工事を提案するリフォーム業者が増えてきた背景には、アスベスト(石綿)の使用禁止が大きく影響しています。
アスベストを含まない屋根材が発売されたのは1996年あたりから、そして初期製品はニチハのパミールや松下電工のレサスのように様々な問題が発生し、その問題は今も多くの方が直面されている大きな問題です。
これら異常が発生している屋根材の存在が、重ね葺き工事を加速させることになった要因の一つであると考えられます。
築20年以上のアスベストを含む屋根材の改修工事として開発されたカバー工法、しかし今となっては当初の目的からは外れ、リフォーム業者が恩恵を受ける工事へと変わっていったような印象を受けます。