古くなったスレート屋根材の改修工事として多く採用されている「カバー工法」ですが、なんでもかんでも「カバー工法」を施工していいわけではありません。
カバー工法でよく使われる屋根材
「カバー工法」で採用される代表的な屋根材としてアイジー工業のスーパーガルテクト、ニチハの横暖ルーフなどの金属屋根材や、ガルバリウム鋼板の表面に天然石が吹き付けられているLIXILのTルーフなどが使用されることが多いと思います。
カバー工法における外壁の取り合い部分の納まり
2階建ての建物で1階に屋根がある場合(下屋、または下屋根といいます)、屋根と外壁の取り合い部分には「雨押板金」という板金が施工されております。
「カバー工法」では屋根と外壁が絡んでいる部分(平行壁、流れ壁)において「改修用雨押板金」という部材を使用して屋根材を納めることになります。
これは既存の雨押板金よりもカバーで使用される屋根材のほうが厚みがあるため、それを隠すために「改修用雨押板金」と板金を使い屋根材を施工することになるのです。
実はこの「改修用雨押板金」を使うことこそ屋根カバー工法において大きな問題を引き起こす可能性が高いのです。
外壁は通気をとるための重要な部分
例えば外壁がサイディングの場合、既存の外壁取り合い部分に施工されている「雨押板金」のところは通気をとるための隙間が設けられております。
「カバー工法」では外壁取り合い部分に改修用雨押板金を施工する必要がありますので、この空気の入り口を塞ぐことになってしまいます。
空気の入り口を塞いでしまうということは通気ができなくなります。
この仕組みはツーバーフォーの建物に対しても同じことが言えます。
通気がとれなくなると...
せっかく通気ができるような仕組みになっているのにこれを塞いでしまうと一体どんな弊害が起こるのでしょうか?
通気がとれなくなると今まで流れていた空気の流れはなくなってしまいまい、それまで発生しなかった室内側に「結露」が発生したり、また見えない壁の中で湿気が溜まりカビが発生するなどの問題が発生することが考えられます。
これに対し在来工法の建物で外壁がモルタル仕様の場合には外壁取り合い部分で通気をとるための入り口はありません。
お客様の大切な住まいを長く維持していくための改修工事のひとつの方法として考えだされた「屋根カバー工法」ですが、施工方法を間違えると大きな問題を抱えてしまうことになりかねません。
これらのことから、屋根カバー工法は在来工法の建物で外壁がモルタル仕上げには適しているが、外壁がサイディングやツーバイフォー構造など外壁面で通気をとる建物に対しては不向きであると言えます。